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さらなる健康寿命延伸へ MRIを用いて圧迫骨折の予後を予測

プレスリリースはこちら

この研究発表は下記のメディアで紹介されました。 <(夕)は夕刊 ※はWeb版>
◆7/7  医療NEWS QLifePro※
◆7/26  産経新聞
◆8/21  読売新聞

 医学研究科 整形外科学の高橋 真治(たかはし しんじ)病院講師、星野 雅俊(ほしの まさとし)講師、中村 博亮(なかむら ひろあき)教授らのグループは、MRIによって骨粗鬆症性椎体骨折(こつそしょうしょうせいついたいこっせつ)における遷延治癒(せんえんちゆ)(骨折が治らず、強い痛みが残存する状態)を予測できる可能性を明らかにしました。
 
2015年の国勢調査では高齢者の割合がついに25%を超えました。それに伴い、今後、骨粗鬆症性椎体骨折(いわゆる圧迫骨折)患者は増加の一途をたどると予想されます。圧迫骨折の約8割は変形を残しながらも治癒します。しかし、一部の患者では骨折が癒合せず、強い痛みが残存します(遷延治癒という状態)。本研究グループでは、MRIを用いて、受傷直後および1ヶ月時点の遷延治癒をどの程度予測可能かを検証しました。そして、早期のMRIを撮影することにより、遷延治癒を早い段階で捉え、効率的な治療指針を確立できることを実証しました。高齢者の健康寿命延伸に向け、大いに寄与できる結果であると考えられます。
 本研究の成果は、平成28年6月25日(土)に医学専門誌Osteoporosis Internationalにオンライン掲載されました。

【発表雑誌】
Osteoporosis International

【論文名】
Predicting delayed union in osteoporotic vertebral fractures with
consecutive magnetic resonance imaging in the acute phase: a multicenter
cohort study
「急性期の経時的MRIによる骨粗鬆症性椎体骨折後遷延治癒の予測-多施設前向きコホート研究」

【著者】
Shinji Takahashi, Masatoshi Hoshino, Kazushi Takayama,Kazumichi Iseki,
Ryuichi Sasaoka, Tadao Tsujio, Hiroyuki Yasuda,Takeharu Sasaki,
Fumiaki Kanematsu, Hiroshi Kono, Hiromitsu Toyoda,Hiroaki Nakamura

【掲載URL】
http://link.springer.com/article/10.1007/s00198-016-3687-3

背景

 2015年の国勢調査で、高齢者がついに25%を超えました。それに伴い、今後も骨粗鬆症患者は増加の一途をたどると予想されます。骨粗鬆症患者では、転倒や打撲など明らかな受傷起点がなくても、骨粗鬆症性椎体骨折、いわゆる圧迫骨折を発生することがあり、70代で約20%、80代になると約40%の人が罹患すると言われています。圧迫骨折は腰曲がりの大きな原因となり、罹患すると脊椎の変形が遺残しますが、多くの症例では3ヶ月程度で骨癒合し、治癒します。しかし一部に骨癒合が得られない場合(遷延治癒)、強い腰背部痛が残存することが多く、患者の生活の質、日常生活動作に悪影響を与えます。また、骨折がきちんと癒合するかどうかの判定には3~6ヶ月と長期を要するということも大きな問題の一つでした。

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結果

 153名の骨粗鬆症性椎体骨折患者(発症2週以内)を対象とし、6ヶ月以上追跡しました。その結果、6ヶ月経過しても骨癒合が得られない遷延治癒例を30例(約20%)に認めました。MRIで骨折椎体内にT2高信号(髄液と同輝度)を示している例が最も遷延治癒に移行しやすいことが示されました。次に有用であったのはT2低信号領域を広範囲に認める所見でした【表1】。特に、受傷時および1ヶ月で予後不良所見(T2高信号あるいは低信号広範囲)を認める場合には、63%で遷延治癒を認めるという結果でした。逆に、受傷時に予後不良所見を認めても、1ヶ月後に消失している例では、わずか11%しか遷延治癒に移行しませんでした【表2】。つまり、1ヶ月を経過しても予後不良所見が残存する場合は、従来の保存治療のみではなく、手術を含めたより強力な治療が必要と考えています。近年ではセメントを注入するという低侵襲な手術も広く行われていますので、それも一つのオプションとなると考えられます。

期待される効果

 骨粗鬆症性椎体骨折は高齢者の3人に1人は罹患する病気で、そのうち約20%で十分な骨折の治癒が得られないと予想されています。骨粗鬆症性椎体骨折患者において早期にMRIを撮影することは、骨折の見落しを防ぐだけではなく、遷延治癒の予測にも有用です。急性期にMRIを撮影し、予後不良の画像所見を有する患者に対して早期に強力な治療を実施することで、効率的な治療指針を確立できるようになると考えています。その結果、高齢者の生活の質の向上および健康寿命延伸の一助となれば幸いです。

研究の詳細

【本研究への参加施設数:11施設
◆研究期間:2012年12月から2015年9月
症例登録:新規椎体骨折と診断された症例の連続サンプリング
適格基準:65歳以上、腰背部痛発症2週以内、MRIで信号変化を認めるもの
除外基準:病的骨折、担がん患者、複数発生の新規OVF、高エネルギー外傷
評  価:登録時、受傷1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月
解析対象:6ヶ月以上追跡可能であった者
単純X線:仰臥位、荷重位の側面像
◆M R I T1強調像、T2強調像、STIR像を撮影し、以下のように分類した。
     〔T1強調像〕 広範囲型低信号?限局型低信号?等信号
     〔T2強調像〕 高信号?広範囲型低信号?限局型低信号?等信号
     〔STIR〕 高信号?等信号に分類

 3スライス(正中、両側椎弓根内縁)の矢状断のうち50%以上の信号変化を認める画像が2スライス以上あれば広範囲型とした。T2高信号は脳脊髄液と同程度の輝度変化とした。遷延治癒は6ヶ月の単純X線で椎体の可動性を認めるものとした。骨癒合不全を結果指標として、登録時のMRI所見の感度、特異度、陽性的中率(positive predictive value: PPV)を算出した。

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