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シングルナノメートルサイズ金粒子の簡便合成法の開発に成功~触媒や光学材料への応用に期待~

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 大阪市立大学大学院理学研究科 後期博士課程3年生 岡本 拓也(おかもと たくや)、迫田 憲治(さこた けんじ)准教授、八ッ橋 知幸(やつはし ともゆき)教授の研究チームは、東北大学の中村 貴宏(なかむら たかひろ)准教授との共同研究により、添加物や後処理を必要としないシングルナノメートルサイズ金粒子の簡便な合成法の開発に成功しました。 本研究の成果は、2019年8月26日(月)、化学専門誌 Langmuirに著者最終稿がオンライン掲載されました。

【雑 誌 名】Langmuir
【論 文 名】Synthesis of Single-Nanometer-Sized Gold Nanoparticles in Liquid- 
      Liquid Dispersion System by Femtosecond Laser Irradiation
? ? ? ? ? ? ?「フェムト秒レーザーによる液?液分散系でのシングルナノメートル※※
? ? ? ? ? ? ? ? サイズ金粒子の合成

?※フェムト秒 = 10 ?15 秒  ※※ナノメートル= 10?9 メートル
【著 者】Takuya Okamoto, Takahiro Nakamura, Kenji Sakota, and
     Tomoyuki Yatsuhashi*
【掲載URL】http://doi.org/10.1021/acs.langmuir.9b01854

研究背景

? 化学的に不活性な金をナノメートルサイズの粒子にすると、触媒活性や特異な光学特性が発現するため医薬品やセンサーなどへの応用が期待されています。ただし、これらの用途に用いるためには粒子の大きさや表面状態などを制御する必要があります。

 化学的手法による通常の合成法では、まず金イオンを薬品により還元したのち、キャッピング剤※1の添加によって粒径の揃った金ナノ粒子を生成します(図1a)。※2しかし、この方法では反応終了後に余分な添加剤(還元剤、キャッピング剤など)を除去する必要があります。一方、還元剤が不要な方法としてレーザーを用いる手法が注目されています。たとえば、水中に浸漬した金の小片にパルスレーザーを照射する、液中レーザーアブレーション法による金ナノ粒子の生成が報告されています。※3しかし、この方法で直径10 nm未満の粒子を得るためには粒子成長を抑制するキャッピング剤の添加を行うか、レーザー照射終了後に遠心分離などの操作を行う必要があります (図1b)。 そこで、私たちの研究チームは添加剤や後処理の必要がない簡便なシングルナノメートルサイズ金粒子合成法の開発に取り組みました(図1c)。

※1 キャッピング剤???粒子表面に吸着させることで分散安定性が向上するイオン
  ? などの添加剤。
※2 http://doi.org/10.1039/DF9511100055
 (A study of the nucleation and growth processes in the synthesis of colloidal
  gold)  
※3 http://doi.org/10.1021/jp0037091
 (Formation of Gold Nanoparticles by Laser Ablation in Aqueous Solution of
  Surfactant)

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研究の内容

 今回、金イオン(塩化金酸)を溶解した水と有機溶媒(ノルマルヘキサン)の混合溶液にフェムト秒レーザー※4を照射するだけで、シングルナノメートルサイズ金粒子を簡便に合成することに成功しました。化学的手法とは異なり、この方法ではイオンを還元するための還元剤、粒径制御のための界面活性剤、そして粒子保護のためのキャッピング剤の必要がなく、さらに室温?空気下で実施可能です。また、生成する金ナノ粒子の平均粒子径はレーザーの照射時間に依存せず、常に10 nm未満で一定でした。そのため、粒径を揃えるための遠心分離操作などの特別な処置は不要です。さらに特筆すべき特徴として、生成した粒子を乾燥すると粒子同士が接触せずに直径数百ナノメートル程度の円形状に集合する※5ことが挙げられます(図2)。この性質を活用することで、金粒子を基板へ規則正しく配列?集積させる、あるいは担体へ担持できると期待されますので、触媒や光学材料などの分野でのさまざまな用途が考えられます。

※4 本研究で用いたものは40フェムト(百兆分の4)秒だけ発光できる
   パルスレーザー。
※5 キャッピング剤や界面活性剤などで覆われていない金ナノ粒子は、水中では分散
  していてもそのまま乾燥させると凝集するため積み重なった状態になります。我々
  は金粒子が水と有機溶媒の界面(今回は液滴表面)に吸着する現象を利用すること
  で、金ナノ粒子のサイズ制御と乾燥後における凝集の防止に成功しました。生成し
  た金ナノ粒子の表面は負電荷を帯びており、電荷反発があるため粒子の凝集が抑制
  されます。さらに、有機溶媒の液滴内には金イオンおよび金ナノ粒子が存在できな
  いため、液滴表面に吸着した粒子への金化学種(金原子、金ナノ粒子)の供給は水
  相側からのみに制限されるために粒子成長が抑制されたと考えられます。

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期待される効果

 今回の成果は、今後のナノ粒子生成法の開発、特に添加剤を用いることのないナノ粒子の構造制御の実現のための設計?開発に大きく寄与すると考えられます。また、粒子同士が接触しない状態で円形状に集合するという特性を活かし、光学材料分野(光電変換の光アンテナ)等への応用も期待できます。

研究資金

 本研究は下記の資金援助を得て実施いたしました。

?科学研究費補助金 特別研究員奨励費(18J15442)
?平成31年度 物質?デバイス領域共同研究拠点 次世代若手共同研究(20195005)