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ビオローゲン陽イオンラジカルはいかにしてギ酸脱水素酵素の二酸化炭素還元触媒能を向上させているか

2020年08月04日掲載

研究?産学

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本研究のポイント

◇ 人工光合成系における二酸化炭素を有機分子であるギ酸に変換する過程において、ギ酸脱水素酵素の活性化に有効な補酵素:メチルビオローゲンの陽イオンラジカル※1が酵素活性の向上にどのように関与しているのかを、実験データを基に考察する酵素 反応速度論に加え、理論化学的計算に基づき解析し、綿密な機構を明らかにした。
◇人工光合成系の実現に向け、二酸化炭素を効率的に有機分子に変換する補酵素の設計開発における重要な指針となる。

1陽イオンラジカル…正の電荷を持ち、不対電子も持っているもの。

概要

 大阪市立大学 人工光合成研究センターの天尾 豊教授と東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の宮地輝光助教は、人工光合成系において、ギ酸脱水素酵素が触媒する二酸化炭素のギ酸への還元過程において、メチルビオローゲンの陽イオンラジカルの電子供給機構を明らかにしました。

 太陽光エネルギーを利用して二酸化炭素を有機分子に変換する人工光合成系を創製するための重要な要素技術として進められている触媒の開発において、ギ酸脱水素酵素(FDH)内で、補酵素であるメチルビオローゲンの陽イオンラジカル(MV.+)が、いかにして二酸化炭素をギ酸に還元するかについて、本質的な相互作用に関しては明らかではありませんでした。

 酵素反応速度論に基づいたいくつかの反応モデルに加え、理論化学的計算に基づくFDH内でのMV.+の結合様式、及び密度汎関数理論(DFT)によるMV.+の電子状態の決定により、実験及び理論検討の両面からMV.+による電子供給の機構を明らかにしました。

 本研究成果は、Royal Society of Chemistry (RSC) が発刊する物理化学の専門誌『Physical Chemistry Chemical Physics?(PCCP)?』誌に掲載されました。

資金情報

 本研究の成果は、大阪市立大学人工光合成研究拠点共同利用?共同研究課題、学術研究助成基金助成金国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))および科学研究費補助金新学術領域研究によって得られたものです。

掲載誌情報

発表雑誌:Physical Chemistry Chemical Physics?(PCCP)(Royal Society of          Chemistry発刊)
論文名:How does methylviologen cation radical supply two electrons to the       formate dehydrogenase in the catalytic reduction process of CO2 to       formate?
著者:MIYAJI, Akimitsu, AMAO, Yutaka
URL:https://pubs.rsc.org/en/content/articlehtml/2020/cp/d0cp02665d