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従来とは逆向きのアプローチ方法 腫瘍随伴性天疱瘡のバイオマーカーを発見

2021年12月20日掲載

研究?産学

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本研究のポイント

◇患者検体から自己抗原を探索するこれまでの方法と異なり、皮膚に大量に存在する「トランスグルタミナーゼ1(TGM1)」を自己抗原の候補として着目し、TGM1に対する自己抗体を保有する患者検体を探索することで、TGM1が腫瘍随伴性天疱瘡1の新規自己抗原2であることを証明した。
◇開発した疾患特異的抗TGM1抗体検査キットは、腫瘍随伴性天疱瘡の早期診断につながる。
◇この遺伝子/タンパク質中心の自己抗原同定法が、様々な疾患のバイオマーカーとしての新規自己抗原を同定する一般的な手法となることに期待。

概要

 大阪市立大学大学院医学研究科皮膚病態学の橋本 隆(はしもと たかし)特任教授とウプサラ大学?カロリンスカ研究所(スウェーデン)との共同研究グループは、自己抗原の候補タンパク質から各種自己免疫疾患の検体を用いて自己抗原を同定するという、これまでの研究方法(患者検体から自己抗原を探索)とは逆向きの自己抗原探索方法を開発しました。それにより、抗TGM1抗体が腫瘍随伴性天疱瘡の特異的診断マーカーとなることを示しました。
 自己抗原の同定は自己免疫性疾患の病態研究と診断に不可欠で、現在自己抗原の同定は、一般的に各疾患患者検体からそれぞれ自己抗原を同定するという手法が使用されています。TGM1は、これまでに遺伝性皮膚疾患との関連が示されてきましたが、後天性の自己免疫性皮膚疾患の自己抗原としては検討されていませんでした。
 そこで本研究グループは、TGM1を自己抗原の候補と考え、このタンパク質を標的として各種自己免疫性水疱症などの疾患の血清を探索しました。その結果、腫瘍随伴性天疱瘡で、55%の感度、100%の特異度で、抗TGM1抗体を検出することを発見しました。この結果により、腫瘍随伴性天疱瘡の確実な診断が容易になり、適切な治療につながることが期待されます。本研究は、2021年12月14日(火)に『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)』(IF = 11.205)にオンライン掲載されました。

補足説明

※1 腫瘍随伴性天疱瘡:指定難病の天疱瘡群の最も重篤な一病型で、確実な診断による早期の適切な治療を要する。
※2 自己抗原:自己免疫疾患において、自己抗体が反応する自身のタンパク質。

研究者からのコメント


橋本 隆特任教授

 本研究は、自己抗体?自己抗原の探索を行った多様な自己免疫性水疱症の血清を、スウェーデンで確立していた各種のトランスグルタミナーゼ(TGM)に対する自己抗体探索システムを用いて検査するという、大きな国際共同研究でした。その結果、世界で初めて、従来の研究方法とは逆向きの、特定のタンパク質からそれを自己抗原とする疾患を探すというアプローチで、TGM1が腫瘍随伴性天疱瘡の特異的な疾患マーカーであることを示した重要な研究だと言えます。

掲載誌情報

雑誌名:

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)(IF = 11.205)

論文名:

A gene-centric approach to biomarker discovery identifies transglutaminase 1 as an epidermal autoantigen

著者:

Nils Landegren, Norito Ishii, Maribel Aranda Guillen, Hordur Ingi Gunnarsson, Fabian, Sardh, Asa Hallgren, Mona Stahle, Eva Hagforsen, Maria Bradley, Per-Henrik, Edqvist, Fredrik Ponten, Outi Makitie, Liv Eidsmo, Lars Norlen, Adnane Achour, Ingrid Dahlbom, Ilma Korponay-Szabo, Daniel Agardh, Mohammad Alimohammadi, Daniel Eriksson, Takashi Hashimoto, Olle Kampe

DOI番号:

10.1073/pnas.2100687118

資金?特許等について

 本研究は、ウプサラ大学、カロリンスカ研究所、大阪市立大学の共同研究として行われました。なお、この研究で開発された抗トランスグルタミナーゼ1自己抗体検出キットに関する技術は特許出願されています(特願 nr 2130180-9 (Ref: TGM1))。